ベルリン&ウィーン・フィル 8人のホルン奏者たち

日曜日(7/3)に、表題の演奏会に行ってきました。場所は初台の東京オペラシティ
音大生と見受けられる人が多かったですが、プロオケのホルン奏者の方もちらほら。クロークはホルン預りとその他の品預りで分かれていたようです。クロークのホルン預りの棚は、さながら楽器店のようだったとのこと。

最初の曲は、ガブリエリの「第7旋法による8声のカンツォーナ」。舞台上がベルリン、1階席の12列目あたりの通路上がウィーンという配置でした。私の席は16列目で、ストランスキーの音に直撃され、曲が良く分かりませんでした。ストランスキーは軽めに吹いていたのに、よく響いてました。

2曲目は、J.シュトラウスIIの「こうもり」を編曲したもの。ウィーン・フィルメンバーのみの演奏です。細かいところはさすがに難しそうに聞こえてしまいますが、音色は絶品。4人で和音を鳴らしただけで、会場は別世界でした。

3曲目は、ボザの四重奏曲。ベルリン・フィルメンバーのみの演奏です。サラ・ウィリスを生で聴くのは初めてだったのですが、いやあすごかった。この曲の4thホルンは、私もアンサンブルで担当しているのですが、相当大変です。息は持たないし、やたら低いし。サラはどうするのかと思ったのですが、噂どおりのシャープな低音でビシビシ決めて行くだけでなく、長い音は当然のようにブレスを取りまくりでした。これはサラがやっているから許されるんでしょうね。私などがやると、「え〜っ!息持たないの?」って絶対言われます多分。今回の演奏で唯一の不満は、2曲目でドールが最後の音を上のFに変えたこと。原曲のままの方が、つながりがいいじゃん。なぜ?

4曲目は、ハイドン弦楽四重奏の編曲もの。8人全員での演奏です。速いテンポの曲で軽く流した感じでしたが、超絶技巧が随所に出てくる上に、8人の誰にソロが出てくるか分からない緊張感の高い編曲です。こういう曲が一糸乱れず、しかも軽く流せるところが、超一流プレーヤーの証ですね。

ここで休憩。飲み物の窓口はかなり混雑してましたが、見ているとビールやワインなどアルコール類の注文が多かったようです。さすがホルン吹き。

休憩後の最初の曲は、フンパーディンクヘンゼルとグレーテル・ファンタジー。ストランスキーの編曲でした。私はこれに一番感動しました。全編比較的ゆったりした感じで、超絶技巧でもないし、おちゃらけでもないのですが、こういうのは素のうまさが試されますよね。ただ音程が合っているとか、音色が良いとか、ダイナミックレンジが広いというのではなく、音楽が素晴らしい。ホルンの真髄を見せてもらったような気がする。
それにしても、ベルリンとウィーンって、ホルンの音色は聴き比べると全く違うのに、一緒に演奏しても全然違和感がないんですね。正直びっくりしました

後半2曲目は、ビゼーカルメン組曲ターナー編曲のものを8人で演奏してました。ターナーものってやっぱり自分達向けの編曲ですよね。今日の8人のメンバーがやってもうまいけど、何かちょっと違うかも。ターナーのCDを聴きすぎたかな。

次の曲はバーンスタインのウエストサイド・ストーリー・メドレー。編曲者はコヴァレヴィッツで、この日のために編曲したとのこと。超絶技巧の雨あられで、とても面白かったです。ヴァレンドルフの歌は上手(というか声がいい)でしたが、サラの歌はちょっと上手くないかも。
この日最後の曲は、ジェームズ・ボンド・メドレー。いかにもトリっていう出来ですね。カッコよく決まってました。


さて、アンコール。「おめでとうございます、みなさまの拍手がアンコールを演奏させることに成功しました」というヴァレンドルフのナレーションに続く最初のアンコールは、やはり例の「地下鉄ポルカ」。それにしても、ヴァレンドルフが「地下鉄ポルカ」って言っただけで盛り上がる聴衆って一体。日本中のマニアが集結って感じですね。

2曲目のアンコールは、これも例のブラームスの子守唄でした。ここでは、ベルリンとウィーンのメンバーが楽器を交換して吹いてました。持ち替えた瞬間、会場からどよめきが起こるところもマニアックです。ウィンナホルンって、ドールが吹くとちょっと違う感じですね。音がミーミーいってるし。最後に一人残されたのはサラだったのですが、これもウィンナと合ってない感じ。ポヘーとか言ってるし。

以上でこの日の演奏は終了でした。座席数1,600超の大ホールなのに、会場は満席でした。随分マニアックな種類の演奏会なのに、大したものです。東京という場所柄なのか。
彼らは7/5以降地方行脚に出るようですが、果たして会場は埋まるのでしょうか。演奏会の最後の方で、ヴァレンドルフが「7/5に銚子で演奏会をやりますので、そこで会いましょう」みたいなことを言ってました。銚子方面のホルン好きの人は、是非どうぞ。まだチケットが手に入るかも。