アンサンブルはオケの肝

マーラー:交響曲第9番

マーラー:交響曲第9番

アバドBPOマーラー交響曲第9番のCDを買いました。

ベルリン・フィルマーラーの9番と言えば、バルビローリ(ASIN:B00005NDD7)、バーンスタイン(ASIN:B00005FHYM)、カラヤン(ASIN:B00005FJ75)が振ったすばらしいCDがあり、この3つが決定盤と思っていたので、それ以外は買うのももったいないかなというのがこのCDを買っていなかった表向きの理由ですが、実はアバドBPOの組み合わせはあまり好みではなく、これまで買い控えていました。しかし最近、チャイコフスキーのぐちさんのブログを見て興味を覚え、購入してみました。
全体的に非常に良い演奏だと思います。すごく自然に音楽が進む感じがします。ちょっと流れすぎかなと思いますが。ただ、ところどころ、カラヤン盤を彷彿とさせるベルリン・フィル訛りというか重しがあり、それがまたいい味を出しています。うまいなあベルリン・フィル
個人的な趣味からは、3楽章の中間部がとても速いのがいただけませんが、トランペットが上手いので許しましょう。


でも自分はホルンを吹いているので、どうしてもホルンの立場から聴いてしまいます。

まずは1楽章。2ndホルンはシェレッケンベルガーでしょうか。はじめのソロは、これまで聴いたどの演奏よりも艶やかです。
1stホルンはもちろんドールでしょう。ドール節に磨きがかかってます。後半のフルートと一緒にやる長いソロですが、音がビンビン飛んできます。でも音程が・・・。そのHすごく低いね、、、あれB♭だったの?みたいな。フルートはパユ節がかかってないので多分ブラウだと思いますが、何の変哲もない自然なアプローチ。音列がそのまま浮き出てくるさまは、高度な職人芸です。一方のホルンにドール節がかかってるので、デュエット感が出てきません。
最後のppのホルンのデュエットは、得意の日和ったようなビブラートが。2ndが安定した支えで素晴らしい。

2楽章で私が考えるホルン的聴き所は、リップトリルです。
その肝心のリップトリルですが、引っ張る引っ張る。木管と全然合ってません。どうもアバドの指示ではないようです。
最後のコントラファゴットと2ndのデュエットはグレート。ここは非常に難所なのですが、難しさを感じさせないだけでなく、素朴な歌心が滲み出てくる演奏です。ただ、そのあとの1stのCの音程が・・・

いかん、いかん。気を取り直して3楽章。
ホルンの音がちょっと荒れてきた感がありますね。力みすぎです。最後のEだって、当てに行ったあとにすることがあるだろうに。

4楽章。はじめの1stソロの息継ぎの処理をどうするかが重要ですね。以前クレベンジャーがノンブレスで吹いていたのにはビックリしました。昨年来日したシカゴ響のギングリッジもノンブレスで吹いてましたね。すごい音だった。
しかしこのCD、別にブレスするなとは言いませんが、2回もブレスすることはないでしょうに。アーティキレーションが変なことになってるよ。なんだかなあ。


多分、普通に聴く分には、全く申し分ないCDです。というか優れた演奏だと思います。このCDを知ったことは自分にとってもプラスになったと思います。でもあのホルンはどうなんでしょう。
彼が吹いている姿は目に浮かぶのですが、脈々と受け継がれてきた職人芸をやる姿ではなく、アマチュアのようなノリで押している姿です。感情移入できる歌いっぷりだといいんだけれど、何故か鼻につくような感じが。もうちょっとほかの楽器に合わせようよ。音程とかアーティキレーションとかさ。アバドが優し過ぎるのかなあ・・・